dream | ナノ



act.027


クリスマス休暇が終わった

休暇中、自宅へ帰っていた生徒達が学校へと戻ってきたので
ホグワーツは本来の賑やかさを取り戻していた

「今日も忙しそうだね、ハリー」

「あー、うん。クィディッチの試合も近いし」


クリスマス休暇中に望むものをうつすという不思議な鏡の虜になり
深夜にベッドを抜け出していた事をハリーとロンから聞いたときには
ハーマイオニーと一緒になって、その行動に呆れたものだったが……

新学期早々、再びニコラス・フラメルについて調べる為に授業の合間も図書館に通い
何か手がかりは無いかと4人で本を漁る日々が続いていた

「どこかで、どこかで見たことのある名前なんだけど」

「それが思い出せれば色々進むよ、ハリー」

「うーん……あ、もうそろそろ練習に行かなくちゃ」

ハリーが席を立つ

そろそろ閉館の時間も近いし、私達も寮へ戻らなければいけない
読みかけの本をぱたりと閉じて、本を片付けたハリーに声を掛けた

「気をつけてね、ハリー」

「ありがとう名前、練習が終わったらすぐ寮に戻るよ」



* * *



その言葉通り、日暮れにはハリーが寮へ戻ってきた

丁度ロンとハーマイオニーがチェスの勝負をしていた所だったので
人差し指を立てて口元へやり、邪魔をしないようにと静かに合図を出したが

彼は元気が無く、とても落ち込んだ顔をしていた

「……ハリー、どうしたの?」

「うわっ、ハリー!なんて顔してるんだい」

椅子に腰を下ろしたハリーが、小さな声で私達に伝えたのは
次のクィディッチの試合の審判を務めるのが、あのセブルスだと言う事だった

「試合に出ちゃだめよ」

「病気だって言えよ」

「足を折ったことにすれば……いっそ本当に折っちゃうとか」

「名前、それってちょっと乱暴すぎやしないか?」

そんな不吉なニュースを聞いた私達は、各々反応を返す
あのセブルスがクィディッチの審判なんて、とてもじゃないがまともに務まると思えない

次の試合はグリフィンドール対ハッフルパフ
この試合、勝てば寮対抗杯を7年ぶりにスリザリンから取り戻せるのだ

もちろん、ハッフルパフに有利な判定をされるに違いない

「できないよ、シーカーの補欠はいないんだ。僕が出ないとグリフィンドールはプレイできなくなってしまう」

ハリーがそう言った瞬間、談話室に何かが勢いよく倒れ込んできた
大きな音と共に現れたのは、ネビルだった

どうやら足縛りの呪いを掛けられたようで、両足がぴったりとくっついたままらしい

「フィニート 終われ!」

慌てて駆けつけたハーマイオニーが呪いを解くと、ネビルは震えながら立ち上がった
一体誰にそんな事をされたのか、薄々検討がついてしまうあたりが少し悲しいが

「ネビル、どうしたの?」

「……マルフォイが」

ネビルは震えた声でそう答えた

「図書館の外で出会ったの。誰かに呪文を試してみたかったって……」

「マクゴナガル先生の所に行きなさいよ!マルフォイがやったって報告するのよ!」

廊下で魔法を使うのは、一応禁止されているのだが
ドラコ・マルフォイにはそういった類のものは頭に入っていないらしい

それを聞いたハーマイオニーが急き立てたが、ネビルは其処から動こうとはしなかった

「これ以上面倒は嫌だ」

ネビルが首を横に振った
それを見て、チェスの駒を持ったままのロンが口を開いた

「ネビル、マルフォイに立ち向かわなきゃ駄目だよ」

真っ直ぐ目を見て言葉を発するロンに、ネビルは目を伏せた

「あいつは平気で皆をバカにしてる。だからと言って屈服してヤツを付け上がらせて良いってもんじゃない」

「僕が勇気が無くてグリフィンドールに相応しくないなんて、言わなくっても分かってるよ……マルフォイが、さっきそう言ったから」

言葉を詰まらせるネビルから発せられたのは、人の心を抉るような台詞だった

人の一番弱い部分をピンポイントで、スリザリンの狡猾という言葉通り
まったくもって将来有望なご性格に育った事に、溜息が漏れてしまいそうだ

「気にしちゃ駄目よ」

「そうさ、ネビル」

ハリーがポケットをごそごそとやって、蛙チョコレートを取り出した

ほとんど泣きかけのネビルにそれを差し出し手渡すと
ハリーはネビルの近くまで寄っていってから、口を開いた

「マルフォイが十人束になったって君には及ばないよ、組み分け帽子に選ばれて君はグリフィンドールに入ったんだろう?マルフォイはどうだい?腐れスリザリンに入れられたよ」

その言葉に多少なりとも元気付けられたのか、ネビルは微かに笑みを浮かべた
ハリーから貰った蛙チョコレートの包みを開け、ぱくりと中身を口の中へ押し込む

「ハリー、ありがとう。僕、もう寝るよ……カードあげる。集めてるんだろう?」

そう言ってネビルはハリーにカードを渡し、寝室の方へ行ってしまった

「またダンブルドアだ。僕が初めて見たカード……」

ハリーはネビルから渡された有名魔法使いカードを見つめていたが
ハッと顔の色を変えて、私とロン、ハーマイオニーの顔を見た


「見つけたぞ!!!」


「フラメルを見つけた!どっかで見たことがあるって言ったよね、ホグワーツに来る汽車の中で見たんだ」

"ダンブルドア教授は特に、1945年、闇の魔法使いグリンデルバルドを破ったこと
ドラゴンの血液の12種類の利用法の発見、パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究等で有名"

ハリーがダンブルドアのカードの説明を読み終える

「ちょっと待ってて!」

ハーマイオニーは跳び上がって大きな声でそう言うと、
女子寮の階段を駆け上がって行ったが、また直ぐに戻ってきた

巨大な古い本を抱えて

「この本で探してみようなんて考え付きもしなかったわ」

本が大きすぎるおかげで、机に置いただけでもスゴイ音がした
ハーマイオニーは興奮気味に囁いて、表紙を開いた

「ちょっと軽い読書をしようと思って、随分前に図書館から借り出していたの」

「……軽い?」

どう考えても軽くは無いその容量に、ロンがそう口走った
それが気に食わなかったのか、ハーマイオニーはむっすりとした表情で

「見つけるまで黙ってて」

そう言って、何かぶつぶつと独り言を言いながら
物凄い勢いで、古くなったページ達を捲り始めた

「これだわ!これよ!」

「……もう喋ってもいいのかな?」

不機嫌そうな声を出すロンもおかまいなし
ハーマイオニーは見つけ出した一説を、出来るだけ小さな声で読み上げた

「ニコラス・フラメルは、我々の知る限り”賢者の石”の創造に成功した唯一の者!」

彼女は勢いよく顔を上げるが、ハリーとロンは首を傾げている
二人ともそれがどういう事なのか、ピンと来ていないようだ

「何、それ?」

「……まったく、もう。貴方達本を読まないの?」

ハーマイオニーはその大きな本をぐいぐいと二人に押し付ける
少しでも活字慣れさせようという彼女なりの計らいだろうが

二人は普段から本を読む習慣さえ無かったのか、目をぱちくりさせていた

「賢者の石は、凄い力を持った物質。どんな金属でも黄金に変えたり”命の水”の源にもなるんだよ」

「命の水って?」

「飲めば不老不死、超アンチエイジングな飲み物ってとこかな」

「ワァオ、そりゃおったまげだ」

助け舟として、簡単な説明を加える

ロンはわざと手を広げる仕草をして、出来る限りのアピールをする
ハリーに関しては何か合点がいった様で、黙りこくってしまった

「あの犬はフラメルの”賢者の石”を守っているに違いないわ!」

「犬って、前に話していたヤツのこと?」

「ええ、名前。それで、フラメルがダンブルドアに保管してくれって頼んだのよ、だって2人は友達だそ、フラメルは誰かが狙ってるのを知ってたのね」

「だからグリンゴッツから石を移して欲しかった……そういう事ね、きっと」

彼らの追っていたニコラス・フラメルはあっさりと謎が解け
そこから関連するワード”賢者の石”まで、辿り着くことができた

それは、誰もが欲する魔法の石

「金を作る石、決して死なないようにする石!スネイプが狙うのも無理ないよ。誰だって欲しいもの」

ハリーの言葉に、ロンもハーマイオニーも頷いた



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